師走

  師走」12月の異称は師走のほかに、建丑月(けんちゅうげつ)極月(ごくげつ)春待月(はるまちづき)暮歳(ぼさい)・・・などがあります。
 師走の由来には、12月は一年の終わりで皆忙しく師匠といえども走り回るという説が一般的ですが、日時が果てるという意味の「としはつるつき」「としはするつき」が「しはす」になったという説もあります。
 季節の銘としましては、寒月、冬籠(ふゆごもり)、寒椿、忙中閑、埋火(うずみび)などがあります。

 身も心も引き締まるような冷たく冴えた冬の空気は、何も寄せ付けないような凛とした厳しさがありますね。この厳しい寒さの中に身を置き修練を積み、一層の上達を目指す「寒稽古」は精神的にも鍛えられるのだと思います。

 12月21日は冬至で日照時間が一年で一番短く、夜がもっとも長い日です。冬至は暦の起点であるため、中国では古くから冬至節としてこれを祝う習慣がありました。
 皇帝、即ち天子は天命として天の動きを司る能力を持つ者とされていたことから、暦作りは天子が天子たることを人民や周囲の国々に示すのに大変重要なことだったのです。

 日本では冬至の日にかぼちゃやこんにゃくを食したり、お風呂に柚子を入れるとその冬は風邪をひかず無病息災でいられるといわれ現代でもその風習は続いています。中国では小豆入りの団子汁を食し、本格化する冬に備えたようです。現在のように
 簡単に暖を取れなかった時代、冬の寒さを乗り越えることは大変重要なことだったのでしょうね。
干し柿

 写真は秋にたくさん生った柿(これは渋柿です)を皮を剥いて干し柿にしているところです。口が曲がりそうなくらい渋い柿も2〜3週間冷たい風に吹かれ、陽にあたりますと、本当に嘘のように甘い干し柿が出来上がります。

 柿のなかでどのような変化が起きているのか不思議です!最初のうちは柔らかい干し柿もお正月を過ぎる頃にはシワシワになり硬くなりますが、硬くなったものを噛み締めて頂くのもなかなか味わい深くて私は好きです。


・・・検定

 最近「・・・検定」という文字がとても目に付くのですがいかがですか?
 「英検」「中検」・・などお馴染みの語学検定ですが、生活英語検定というのもあります!

 「漢字検定」や「歴史能力検定」「江戸文化歴史検定」「下町雑学検定」「歌舞伎検定」・・・そして発見しました「忠臣蔵通検定」!他の検定と違って、通というのが面白いと思いました。
 

 検定というとなんだか堅苦しい試験というイメージがありますが、通というと忠臣蔵が大好きな仲間たち的な感じがしませんか?
 私も忠臣蔵が大好きですので一度挑戦してみようかしら?とかなり本気で思っているところです。(通が気に入ってしまいました!)

 これだけ検定が多いということはきっと受験する方がたくさんいらっしゃるのでしょう。向上心や好奇心旺盛ですごいと思いますが、検定を受けるということはランク付けされることでもあります。
 
 ランク付けされるということはその分野においての自分の立ち位置が明確になりますから、ある種の安心感はありますよね。受かればの話ですが・・・。
 「歌舞伎検定」なら大丈夫かな?いやいや落ちるかもしれない・・・。
 こっそりと・・・。う〜ん・・・。
 やはり私は「通」でいくことに致しましょう。明日は12月14日おりしも赤穂浪士討ち入りの日です。

平成二十年十二月十三日

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 11月は異名を「霜月」、また「雪待月」「神楽月」「神帰月」・・・などといわれています。「神帰月」は10月の神無月に出雲に集まり不在だった神様が、11月には元の場所に戻ってこられることから「神帰月」ということです。
季節の銘としては、「寒月」「初霜」「常盤」「千年翠」「口切」・・・などがあります。お茶の世界では名残の気分を一新し開炉を迎えますことから、各所で炉開きのお茶会が開催されます。

 このところ我が家の庭はとても賑やかです。カラス、尾長、鳩、ホホ白、すずめなどが柿を食べに来るのです。柿も時期をずらして生ってくれれば良いのですが、柿一斉に紅く色づきますので人間も鳥も大忙しです。

 鳥にも味覚があるのでしょうか、ちゃんと紅く熟れた実から食べ渋柿に移っていきます。
  高いところに生っている柿は鳥の為にとっておきますので、当分賑やかな日が続くことでしょう。

 
『いざ、バーデンバーデン』

 ドイツにあるバーデンバーデンはシュバルツバルト(黒い森)に隣接する国際的な保養地です。華やかな美しさと洗練された落ち着き、まるで庭園の中に作られた都市のようです。
 この街の中心に、和風ショップ「hanami」はあります。


hanami

 

 日本の着物が大好きというドイツ人女性ヴェロニカさんのお店「hanami」にこのたび「Mag華紋」を置いていただけることになりました。本当に嬉しいことです。日本でもまだ東京だけですのにいきなりドイツ・・・!

 文化の違うドイツの方々に「Mag華紋」がどのように理解され、受け入れて頂けるのか、楽しみでもあり、不安でもあり、ドキドキいたします。


『伝統的工芸品チャレンジ大賞』


 今回で4回目になります東京都の「伝統的工芸品チャレンジ大賞」が開催されました。
 
テーマは「花」。私は家紋を入れた「Mag華紋」につまみ細工の花を添えて制作しました作品を出展しております。

菊 菊

 場所・・・江戸東京博物館にて。
 日時・・・11月13日〜19日(最終日は12時まで)

 会場は明るくとても見やすい展示になっております。今日は搬入の日でしたが、お客様からのご要望が多かったようで多くのかたが入場なさいました。

 「アトリエ喜の蔵」のブースはNo90です。どうぞ「職人の技」やそれを生かしたユニークな作品をご覧下さいませ。

チャレンジ大賞

 今月は特別展として「ボストン美術館浮世絵展」が開催されております。秋の一日江戸の文化に浸ってみてはいかがでしょうか?
 両国の江戸東京博物館にぜひお運び下さいませ。

 

 

平成二十年十一月十二日

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「Mag華紋が新宿タカシマヤで展示販売されます!」

期間・8月27日(水)〜9月9日(火)まで。
場所・新宿タカシマヤ11階呉服売り場にて。
    エスカレーター脇のコーナー

 東京都の伝統的工芸品推進の一環として22社が出品しております。
今回、アトリエ喜の蔵は「家紋」と「華紋」を合体させたNewバージョンのMag華紋を発表しようと思っており、このとても豪華なNew Mag華紋は「七五三」や「成人式」「結婚式」などにピッタリです!

高島屋にて

 ハレの装いに華やかさと格式がプラスされることでしょう。お暑い中恐縮でございますが、どうぞ皆様「新宿タカシマヤの呉服売り場」にお運びくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。


8月は「葉月」

 他に観月、秋風月、燕去月、月見月などがあります。又季節の銘としましては、秋天、不知火(しらぬい)、望月、月影などがあります。
「葉月」は木の葉が黄変して落ちる月、即ち「葉落ち月」が「葉月」になったといわれています。

 木々には深緑の葉がたっぷりとありますのに、葉落ち月というのは何とも解せない気がいたしますが、旧暦の葉月というと新暦の8月31日〜9月28日までの期間のことですので、9月の終わりになれば葉が色変わりしてもおかしくありませんね。

 ことしの夏は地球温暖化現象が影響しているのでしょうか、とびきり暑いように感じます。夜になっても気温が下がらず、扇風機の風はお湯をかき回しているようです。



「梅干、梅干・・・・」


 写真は梅干を天日干ししているところです。
毎年梅雨明けを待って、大小不ぞろいの梅干たちは庭先に並びます。太陽の陽射しは梅を甘くしてくれます。梅

家で漬ける梅干は塩分濃度13〜15%ですから、市販の減塩のものに比べるとかなりしょっぱいですが、味は最高!だと思っています。

  梅は漬け込んでいる過程で「カビ」が出ますと、きれいに取り去っても出来上がりが臭く、私はその臭いがとても気になるのですが、塩分濃度を13%〜15%にしますと失敗もなく、おいしい梅干ができるのです。
 ほとんど差し上げてしまうのですが・・・。

 今年の梅の収穫は約10キロ、以前は30キロは採れたものですが、木も年をとるのでしょうね。

 この数年不作続きの「柿」が、今年は緑色の実を沢山付けてかなり豊作になりそうな気配です。このまま台風に負けず秋の収穫まで頑張ってくれると良いのですが。自然の恵みに感謝です!


平成二十年八月十五日

 

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 大切なお知らせがございます。
 これまで「おしゃれ紋」として皆様におなじみの「取付け自由自在家紋」ですが、このたび新しい名前がつきました!

 『Mag華紋』です。
 アトリエ喜の蔵の「取付け自在家紋」には、正式な家紋から季節の花々をつまみ細工にしたもの、押し絵、江戸象牙など色々な種類のものがありますが、これらは全てマグネットで取り付けるということを特徴としています。大切なお着物や、服地を傷めないためです。
 そこでMaguneto(マグネット)を用いた華やかな紋ということで『Mag華紋』にいたしました。ありきたりな名前では面白くないと思っていました。いかがでしょうか?

 『Mag華紋』これからもどうぞよろしくお願い致します!

 さて、6月は「水無月」、ほかに「水月」「松風月」「炎陽」などがあります。水無月とする理由には諸説あり、文字通り「みずなしつき」で梅雨も終わり水も枯れ尽きるという説と、これとは逆に田植えも済み、田んぼごとに水を張る「水張り月」「水月みなつき」であるという説があります。
 季節の銘としましては、氷室、蝉時雨、夏衣などがありますが、これらは全て旧暦でのことですので現在の暦とは約1ヶ月ほどのずれがあります。

 7月は「文月」、他に「女郎花おみなえし」「七夜月」「蘭月」などがあります。文月は七月七日の七夕にちなんだ呼び名であるというのが定説です。
 「あらたまの年の緒長く思いきし恋をつくさむ七月の七日の夕は吾も悲しも」(万葉集)季節の銘としては、白露、牽牛、野分、虫の宿などがあります。暑さも極まった頃、吹く風や虫の音に季節の移ろいを感じていたのでしょうか・・・。


「薩摩琵琶」

 先日「隅田川歴史クルーズと回向院で聴く薩摩琵琶」に参加いたしました。どんよりとした空模様の中、両国の船着場から船に乗り隅田川にかかる、言問橋、吾妻橋、駒形橋、蔵前橋・・・などの説明を受けながらクルージングすること1時間。

 隅田川は大川とも言われていたのだそうです。歌舞伎の「三人吉三」の有名なせりふ「月も朧に白魚のかがりも霞む春の空、ねぐらへ帰る川端で・・」の川端は大川端のこと。
 「白波五人男 稲瀬川の勢揃い」という名場面、この稲瀬川とういのは大川のこと。時代劇を見ていますと「大川」という名前はよく出てきますよね。

その後両国の船着場に戻り下船してから徒歩にて回向院へ。「回向院」は1657年の振袖火事で亡くなった方々を弔うために、宗派に関係なく全ての人を回向するという目的で建立された寺院です。鼠小僧次郎吉や中村勘三郎のお墓があることでも有名です。

 さてこの回向院で拝聴しました薩摩琵琶、本当に素晴らしいものでした!
かつては薩摩の男性のみに演奏が許されたという薩摩琵琶は、16世紀薩摩藩主島津忠良が藩士の士気を向上させるために独自の曲や楽器を改良させたのが始まりです。

 武士の倫理や戦記、合戦物を歌い上げる勇猛豪壮な演奏に向くように琵琶の胴を硬い桑製にし、撥(ばち)で叩きつけるような打楽器的奏法を可能にしたのです。撥はこれまでのしゃもじ型から大きな扇子型に変化させ、いざという時の護身用の武器としました。琵琶
 昔は立て膝で演奏しており、これも攻撃を受けた際すぐに応戦できる体勢をとっていたということです。楽器のお稽古というよりも武術の修練といった命がけに近いものだったのだそうです。

今回の演目は平家物語「敦盛」です。熊谷直実が戦さとはいえ、自分の息子と同い年の敵の公達、敦盛を討たねばならぬことに哀れを感じる平家物語の圧巻です。繊細で物哀しい風の音は弦をなでるように、どっと詰め寄せる駒音、斬り合う太刀の音は激しく打ち込む打楽器のように・・・、声色はあるときは高く、あるときは地を這う風のように低く緩急自在・・・。
 本当に美しいです!

 薩摩琵琶の演奏はとても変化にとんでおり三味線のように軽く華やかな雰囲気にもなりますし、恐ろしいような激しさも表現することができるのです。
 表情豊かな楽器と歌声は、その情景に色彩と奥行きと温度を感じさせます。主人公と同じ空気を吸っているような気が・・・。

 戦さはむなしい、勝っても負けても。
一七歳の若者の首を討たねばならない直実も、討たれる敦盛も共に哀れです。

「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響あり。 
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす。
おごれる人も久しからず 唯春の夜の夢の如し。
たけき者も遂には滅びぬ 偏に風の前の塵に同じ」

 ズシーンと何とも胸がいっぱいになり本堂を後にいたしました。機会がございましたらぜひ一度、薩摩琵琶をお聴きになることをお勧めします!
(この後、鼠小僧次郎吉の墓石前にある石を削ると勝負運が強くなるというので、夢中で削りました。アカデミックに感動していた自分と同一人物とは思えません・・・。)

平成二十年七月一日

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展示会の写真


『目に青葉 山ほととぎす 初松魚(鰹)』

 5月はつやつやとした青葉が本当に美しい季節です!柿の葉はあっという間に青葉で覆われひとまわり大きくなったような感じがいたします。この柿の葉は真夏の暑い日ざしをずいぶん遮ってくれるのですよ。


展示会の写真

 5月は皐月、五月雨月、早苗月・・・などと呼ばれています。季節の銘としましては、梅雨、杜若(かきつばた)、露草、浮船などがあります。
 お茶の世界では「炉」から「風炉」にかわる季節です。少しづつ夏にむかっていく感じですね。


 さて、4月の歌舞伎座では珍しい配役での「勧進帳」がかかりました。皆様ご存知の「勧進帳」は歌舞伎の演目人気投票No1、しかも時代を問わずダントツの一番なのだそうです。
 今回の配役は、弁慶・・片岡仁左衛門、富樫・・中村勘三郎、義経・・坂東玉三郎という面々。このお三方での「勧進帳」を観ようと詰め掛けたお客様で劇場は満員でした!

「勧進帳」は芝居内容もさることながら、長唄が大変素晴らしいことでも有名です。『旅の衣は鈴かけの 旅の衣は鈴かけの 露けき袖やしおるらん。時しも頃は如月の如月の十日の夜月の都を立ちいでて・・・』ここは長唄をたっぷりと聴かせます。

 いよいよ花道から義経一行が登場。山伏を一人たりとも通してはならない!と厳命を受けている関守富樫の守る安宅の関、何としてもこの関所を無事に通り奥州へ逃れたい弁慶率いる義経一行との壮絶な駆け引きの始まりです。

 東大寺再建のための勧進(寄付)の旅という弁慶に、それならば勧進帳をよんでみよという富樫。もとよりあるはずもない勧進帳を弁慶はとうとうと諳んじます。(ここは見せ場のひとつです。)
 それでも納得しない富樫は矢継ぎ早に仏教についての質問を繰り出しますと、弁慶は丁々発止と見事な受け答えで切り返します。

 切り抜けたと思ったその時、関所の番卒が編み笠の中の義経の顔に気がつきます。絶体絶命!・・・弁慶は「愚かな強力(荷物運び)め!」と主君である義経を杖で打ち据えます。
 当時は主君を杖で打つなど決してありえないこと。富樫は弁慶がそこまでして義経を守りたいのか、と主従の絆の深さに強く心をうたれます。

 富樫は義経と知りながら一行の通行を許可します。更に道中の無事を祈って「人の情けの酒宴」で一行をもてなします。弁慶は返礼に「延年の舞」を披露………
 『面白や山水に 面白や山水に杯を浮かべては水に引かるる曲水の手まずさえぎる袖ふれて・・・』この踊りの振りの中で弁慶は「早く行け」と一行に合図をします。

 一行は弁慶を残し足早に奥州へと急ぎます。ここで下手に弁慶を残したまま定式幕が閉まります。弁慶は富樫への感謝をこめて舞台に向かい深々と一礼します(富樫は自らの命をかけて一行を逃したのです)次に客席に向かい一礼。
 

 そして東西南北と天地を鎮めるという、まさに全身全霊の演技「飛び六法」で豪快に花道を飛んでいきます。まさに最高の人気演目の最高の瞬間です!花道の幕が閉まった瞬間「はぁ〜」と心地よい脱力感があり、何度観ても本当に感動してしまうのです。さすがに人気No1ですよね!

さて、日本人が愛して止まないこの「勧進帳」ですが、海外公演ではあまり人気がないそうです。要するに謀反人の一行を見逃したというだけのストーリーに何故そんなに感動するのか?ということらしいのです。

 こちらからすればなんで感動しないのか?な気もいたしますが、やはり歴史的な背景がないということが原因の一つなのですね。
 それから日本人は悲劇の英雄が大好きで「判官びいき」という言葉は義経から来ている言葉です。不遇な幼少時代から華々しく時代の表舞台に登場した義経は、実の兄である頼朝の命によって命を落とします。

 鎌倉幕府を樹立した頼朝の陰で散っていった若き英雄を人々は忘れることなく語り継ぎ、やがてお能の「安宅」、歌舞伎の「勧進帳」になりそれら舞台の上で活躍させたのでしょう。

 しかしながら「勧進帳」の主人公はあくまでも弁慶です………
 このあたりに??を残しながらそろそろ幕といたしましょう。

平成二十年五月二〇日

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展示会の写真


『桜だけは絶対に満開!』

 4月は「卯月」、農作業を始める月として収穫期の神無月と対応する重要な月です。他に清和月、鳥待月、鳥来月、花残月などの呼び方もあります。
 2〜3日前にようやく咲き始めた桜は今日はもう満開!桜は一年中日本のどこかで咲いているそうですが、東京あたりではこの一週間が一番美しい時期でしょう。

 アトリエのある中目黒は目黒川の両側を桜が覆いまるで花のトンネルのようです。空気までが桜色に染まります………

 木々に咲く花は一分咲き二分咲き…それぞれに風情があり美しいものですが、
 桜だけは絶対に満開!それも花びらが少し散りかける頃の美しさはなんだか怖いようです。

「花は桜木、人は武士」といわれるように、昔から散り際の潔さを武士の生き様と重ね合わせ、それを美学としてとらえていた日本人は、桜の花にそのすがたを見ていたのでしょうか。

 桜は「家紋」にも多く用いられています。桜花を正面からみた形を描いたものが基本となり、葉の付いたものや、裏から見たものなどがあります。「アトリエ喜の蔵」の紋は「松葉桜」といい松葉で桜の花を模ったものです。

 なにはともあれ「お花見」をしなくては!

 

 


 

『江戸の技、東京の味』

 3月22日、23日に浜松町産業貿易センターで開催されました「江戸の技、東京の味」の展示会のご報告をさせていただきます。

 

展示会写真

 
 この会は東京都指定の伝統工芸品40品目を扱う職人、デザイナー&業者が出品しており、それぞれ今の時代に合うような工夫をしたユニークな作品作りが特徴です。 私のブースは1m80cmで間口90cmの奥行き。
 真ん中に高さ1m10cmの4曲屏風(これは手作りで屏風屋さんに褒められたのですよ!)を置きそれぞれ着物型をはめ込み、そこにお洒落紋を付けてみました。

 そのほかのお洒落紋はクリアボードにぺたぺたと装着し展示いたしました。
 マグネットタイプのお洒落紋は、屏風にもクリアボードにもしっかりと付き本当に便利です。「ネックレスタイ」は従来のものに銀座香十の香りを加味した「ほんのり香りタイ」を展示。伽羅や白檀といった昔ながらの香りは奥ゆかしく心癒されるものです。

 「お洒落紋」のなかの家紋シリーズは大変好評でした。家紋の大きさや枠の色などを御自分の好みにあわせてお選びいただくことが出来るということで人気をいただいたのでしょうか。

 今回会場にいらした多くの方々に家紋を伺いましたが、皆様御自身の家紋の由来についてとても詳しくまた楽しげにお話くださいました。
 御自分の家紋を大切にしていらっしゃるお気持ちが伝わってまいりました。

 今回の展示会で私は皆様にいろいろなことを教えていただき感謝したしますとともに、家紋文化の一端を担う者として心を引き締めお役に立てるよう努力してまいりたいと思いました。


平成二十年四月一日

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夏みかん、椿の写真

『我が家の小さな春』

3月になりました。
 何かと春の訪れを感じさせる今日この頃ですが、最近強風の日が多いと思いませんか?『風雨あらたまりて草木いよいよ生ふるゆえに、いやおひ月いふ・・・』

 3月の異称は弥生、風雨の後草木いよいよ茂るという意味です。それにしてもこのところの風は半端ではありません。季節の銘としては「汐汲み」「羽衣」「花霞」「若草」・・・などがありますが、いかにも春らしいほんわかとした雰囲気で、なんだかお芝居の題名みたいですね。

 写真は我が家の小さな春の風景です。庭の片隅に「蕗の薹」が芽を出しました。これこそ春の味覚の代表格!蕗の薹のてんぷらに蕗味噌、蕗の香りとほろにがさは大人の味ですよね。

 夏には青々としていた「夏みかん」もすっかり黄金色に色づきそろそろ収穫です。夏みかんという名が付いているのに収穫は夏ではないのですね。 椿は濃い緑の葉の中で花をつけますので、花は鮮やかでとても存在感があり凛とした美しさがあります。これから暖かさにむかっていろいろな花が咲いてまいります。楽しみな季節です。

 さて展示会のお知らせをいたします。3月22日、23日の両日浜松町の東京都立産業貿易センター3階において「江戸の技、東京の味」現代に生きる伝統工芸物産展が開催されます。

 私も「お洒落紋」を中心にハンドバッグ、ネックレスタイなどを出品いたします。写真ではなかなか分かりにくい「お洒落紋」の使用方法ですが、着物の人形型に装着し実際ご使用いただいた雰囲気をご覧頂けるようにいたしました。ただいま大道具の製作中です。(なかなかの力作です………)

 会場では東京都産の食品や骨董品の展示販売のコーナーもございますのでお楽しみいただけると存じます。
 春の一日、どうぞ貿易センターへお出かけくださいませ。

平成二十年三月六日

 

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歌舞伎のポスター

『小町村芝居正月』

 二月は如月、他に梅見月、初花月、木の芽月などがあります。梅の花もほころび始め「笑いかけ」のなんだか楽しい季節になりました。

 さて私、1月14日に国立劇場初春公演「小町村芝居正月」を見てまいりました。菊之助さんの際立つ美しさと、これでもかとばかりに繰り出す趣向の数々、とても面白かったのでご紹介させていただきます。

 この芝居は219年ぶりの再演で江戸寛政期に作られた顔見世狂言です。出演は菊五郎丈、松緑、菊之助、時蔵さん方。
 内容は簡単にご説明しますと、平安時代、天皇の位争いをしている兄弟とその取り巻き達の争いを背景に、歌人として名高い大伴黒主や小野小町、深草少将などにまつわる様々な伝承を取り入れ、そこに盗まれた宝剣探しを絡ませたり、恋の駆け引きもあり、最後に天下を我が物にしようとしている悪党の悪事を暴く、というものです。

 顔見世というのは本来一年契約であった役者の顔ぶれを見せる興行でした。その時に上演されるのが顔見世狂言ですが、この顔見世狂言について今回初めて知ったことがあります。顔見世狂言には、こうでなくてはならないといった様々な約束事があるということです。
 その中でも私が特に面白いと感じましたところをいくつかご紹介します。

1 世話場(生活感の漂うような場面)は雪景色で、登場する男女は離別しなくてはならないという決まり。しかもとても理不尽です。
 亭主がいきなり若くて美しい女性を連れてきて「新しい女房だ、お前は出て行け」などといいます。女房は雪の中をとぼとぼと出て行きます。
 これが現代ですと「おや?そうきましたか」と言ってファイティングポーズをとるところですよね。

2 動植物の精が人間となって出てこなくてはならない。今回は狐でした。所作に狐っぽい手つきがはいります。

3 悪党が壁を蹴破って登場しなくてはならない。一瞬ですからウトウトしていると見損ないます!そして大詰め、善人たちは大変な危機に陥りますが、間一髪というところで花道の奥から「しばらく!」と声がかかります。このあたりが歌舞伎の醍醐味、ワクワクする場面です!
 そこへ畳一畳もありそうな大きな「暫」の衣装の人物が登場し、悪事は暴かれ舞台は一変して賑々しくめでたしめでたし、引っ張りの見得をきって幕となります。 昔から日本人は「どんでん返し」というのが大好きなんですね。これも「一陽来復」に通ずるのだそうです。
 初春の一日、歌舞伎を楽しんでは如何でしょうか。

平成二十年二月三日
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「日向爪光琳梅」と「光琳松」

 年が改まり七草粥、鏡開きも済みますとすっかりお正月気分も抜け、日常の生活が戻ってまいります。年末に気合を入れた大掃除もいつのまにか元の木阿弥・・・

 さて今年の目標はやはり「家紋」「お洒落紋」の創作を中心に、最近少し人気の出てまいりました「ネックレスタイ」などの制作に力を入れ活動していきたいと思っております。

 写真に紹介いたしました紋は「日向爪光琳梅」と「光琳松」です。花が咲き始めることを「笑いかけ」というそうです。
 よく花のつぼみが少し開く様子を「綻ぶ」(ほころぶ)と表現しますが、どちらも思わずふっと口元のゆるむような感じでしょうか。

 以前私は夫の転勤で4年間和歌山県の「紀ノ川」という所に住んでいたことがありました。山に囲まれた自然豊かなところで、春先になりますと山全体が桜や桃の花でそれは見事なピンク色に染まり、まるで一枚の美しい絵を見ているようでした。

 山がピンクに染まる前、冬枯れの茶色い山がフワッとした甘いグレーになるいっときがあります。花がほころぶ前夜といった感じです。暖かい春を、美しい花の開花を予感させるなんとも胸ときめく幸せな瞬間でした。

 「光琳松」は皆様おなじみの松の紋です。松は一年中青々と繁り、生命力が強いことから縁起の良い木の代表格です。
 又、松は「待つ」に通じお正月には神を待つ依り代として門松をたて、客人を待つ玄関には松の木を植えたのだそうです。

 「光琳松」の上に「日向爪光琳梅」を重ねてみました。「笑いかけ」て神様やお客人を「待つ」、ちょっと良い感じです。

平成二十年一月十日

 

 

 
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